メンタルクリニック ラッコリン

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Youtube 原稿「子育てと親子 ~その③~」 子どもの社会的退却と親のかかわり方   広島市 心療内科 精神科 中村道彦 投稿日:2020.06.22

以下は、第4回目の動画「子育てと親子 ~その③~」 子どもの社会的退却と親のかかわり

https://youtu.be/1tsCwYZWCN8の原稿です。

子育てと親子

その3 子どもの社会的退却と親のかかわり方

私は広島市南区の、メンタルクリニック ラッコリン院長、中村道彦といいます。

本日は「子育てと親子 その3」として、社会的退却状態にある子どもと、親のかかわり方についてお話します。社会的退却は、「不登校」や「ひきこもり」のように、生産的活動に従事する社会から身をひき、自らの目標を達成する努力を、果たしていない状態です。このような状態に陥った子ども達を、親はどのように受け止め、関わればよいのでしょうか。ここでは、親子間にみられる5つの悪循環を紹介します。最初の3つの悪循環は近藤直司(こんどう・なおじ)先生の提唱されたものです。

1の悪循環。

子どもが社会的退却、例えば登校を拒むようになると、親は子どもの行動が理解できず、不安になります。そして焦りや怒りを覚え、子どもに「甘えないで、学校にちゃんと行きなさい」と叱咤激励し、子どもを登校させようと必死になります。ところが子どもには、親の必死さが、親自身の不安を解消したいため、としか思えません。子どもの気持ちを理解せず、親の期待ばかりを押し付ける親に、子どもは反発し、ますます登校を拒む、という悪循環がつくられます。

親は「こんな子どもに小遣いをあげるべきか」と迷い、子どもの気持ちがよくわからないと困惑し、子どもの意思を問うことなく、先回りして物事を決めてしまいます。そのことに子どもは悪感情を示しますが、親は子どもの示す嫌悪感に不感症になっており、先回りを続けることになります。この状態は、「片手で子どもの背中を押し、反対の手は子どもの手首を握る」という矛盾した状況であると、近藤先生は指摘されています。

2の悪循環。

子どもが自己愛的行動を示す場合です。社会的退却状態に陥っているのは、親や世の中のせいと決めてかかり、何かにつけて親や社会を非難するようになります。親も子育てに間違いがあったのではと疑心暗鬼で、子どもに強弁されると、そのように受け止めてしまいます。

子どもは親の弱腰な態度を見て、親に償いを求め、非現実的な解決方法を要求することもあります。例えば、「自分にはすごい能力がある、この予備校に行けば有名大学に合格できる、そのためこの家を売って金を用意しろ」と親を恫喝したケース、あるいは、親を奴隷のように扱い、子どもが指示する通りに洗濯物をかたづけていないと、親を罵倒し暴力を振るうケース、などがあります。それでも親は、子どもの独裁に甘んじ、子どもの理不尽な要求に応えようとする、不可解な状況が生まれます。

3の悪循環。

身体化を示す子どもに多い悪循環です。子どもは、自分自身が心身ともに傷つきやすく、困難な状況に向き合えないと思い、一方、親は、子どもに干渉して傷つけることを恐れ、腫れ物に触れるように扱います。

親は子どものことを「分かりすぎ」ています。そして、親は誰にも援助を求めようとはせず、親子は「あたらずさわらずの共謀関係」の中で暮らしている、と近藤先生は述べておられます。この家族関係の中で、親子とも互いに気遣をしているように思えますが、本当の「こころの交流」は欠如しています。

4の悪循環。

この悪循環では、親の自己評価も低い傾向にあります。「子どもは親を満足させて当然」と思っている親は、子どもが「良い子」でいるときは、満足して、子どもと良好な関係にあります。ところが、子どもが社会的退却状態になると、「子どもが親を困らせる」などとはもってのほか、と親は怒りを覚えるのです。親が子どもを叱責すると、子どもは、反発心から、さらに社会的退却を悪化させてしまいます。

子どもが、親に依存することは自然ですが、親も「子どもは親を満足させて当たり前」と、親も子どもに逆依存しています。ところが、親は、自分が子どもに依存していることに気付かず、子どもを責めることで、自らの依存心を覆い隠しているのです。

5の悪循環。

親が生真面目で責任感が強い場合です。子どもの社会的退却に直面し、親は自分の子育てに問題があったと自らを責め、子どもの社会的退却を何とかしようと、もがき苦しみます。しかし、簡単に解決することはなく、親は育児の後悔と無力感に襲われ、抑うつ状態に陥ります。子どもは、親の苦悩を少しでも取り除きたいと思っても、社会的退却状態を克服できない、弱い自分を責め、ますます社会的退却を強めることになります。

その結果、親子ともに抑うつ状態になり、冷静に問題を直視できず、困惑の中で日々を過ごすことになります。最悪では拡大自殺に発展する危険性があります。

先に述べました、家族の悪循環を断ち切るには、どのようにすればよいのでしょうか。その方法の1つは、親から子どもに向けた鎖を断ち切ることです。

1の悪循環では、親の叱咤激励などの登校刺激の鎖を断ち切ることです。親が、登校刺激を抑えることで、子どもへのプレッシャーを軽減させ、社会的退却を緩めることができます。

2の悪循環では、親の謝罪感情を断ち切ることです。子どもから、親のせいだと非難されても、そのまま受けとめるべきではありません。親は、子どもを虐待することもなく、一生懸命、子育てをしている限り、育児に誤りはありません。子どもが親を責めるとき、子どもの言葉に対し、肯定も否定もすべきではありません。例えば、「あなたはそんな風に思っているのね、とても悲しいわ。お母さんもお父さんも、あなたを一生懸命、育ててきたと思っています」などと答えることもできます。

3の悪循環では、腫れ物を触るような係わりを、断ち切ることです。子どものこころの奥に隠れた思いを、親子ともに理解するため、「本音」の会話ができるよう努力すべきです。

4の悪循環では、「子どもは親を満足させて当然」という、親の逆依存に気付き、見直すことです。親の依存心を満たすために、子どもの自立を促すのではなく、子どもが親から自立するために、子どもの自立を促すことを、認識すべきでしょう。

5の悪循環では、親の不適切な自責感に、気付くことです。育児に正解不正解はなく、一生懸命、子育てをしてきた日々こそが、真実であることを再認識してください。さらに、親の育児が、子どもの人生を決定する唯一のものではないことも、思い起こしてください。

この度の新型コロナウイルス感染症COVID-19のパンデミックで、子ども達の自宅待機や親の在宅勤務などが、家族関係に影響しています。家族間の距離、ファミリー・ディスタンスが縮まるにつれ、親のイライラは高まるかもしれません。この機会に、親子関係を今一度、見直し、ポスト=パンデミック時代に向けて、明るく力強い家族の絆を築いていきましょう。ご清聴、ありがとうございました。



			
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