メンタルクリニック ラッコリン

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Youtube原稿「子育てと家族 ~その①~」  広島市 心療内科 精神科 メンタルクリニック ラッコリン 投稿日:2020.06.19

以下は、中村先生のYoutube出演時の原稿です。

(動画はこちら)https://www.youtube.com/watch?v=zqdVa-2g-G0

文字の方がわかりやすい、という方もおられると思いますので、以下をご覧ください。

子育てと家族

その1 戦後の家族と教育

2回講演は、「子育てと家族」についてお話をしたいと思います。この講演は3回シリーズでお話しします。
育児はいつの時代でも、どこの国や地域でも、笑いと涙でつづられた歴史として、それぞれの家族で語られてきました。現代では、育児についてさまざまな意見が氾濫して、親はその意見に振り回され、子育てに自信を失い、落ち込むこともあります。本来、育児に王道はなく、正解不正解もありません。別な言い方をすれば、あなたの真摯で一生懸命な子育てこそが、正解だといえます。親は子育てに悩みながら、子どもの成長に希望と生きがいを託し、子どもと共に親も成長し、持てる力を子どもに注いできました。加えて、子育ては、親の思いだけでなく、時代や文化によっても影響されます。我が国でも、その時代時代における文化や社会の下に、育児の在り方も変化してきました。この度の新型コロナウイルス感染症COVID-19のパンデミックは、家族の日常に激震を与え、その在り方を見直すきっかけになるかもしれません。

今回は「その1」として、育児にまつわる親子の在り方が、戦後、どのように形作られてきたかを、お話したいと思います。そして、パンデミックの嵐から立ち直ることができた日に、家族の姿は、果たしてどのようなものになるのでしょうか。

最近の子ども達に目立つことは、自己評価が低く、自信をもてない子ども達が多くなったことです。自己評価を下げる背景要因は、戦後の家族と教育にあると思います。最初に家族の変化について考えてみます。
戦後、家庭における女性の復権と社会進出に伴い、家族の在り方が大きく変わりました。加えて、家電製品やブランド商品など「物」への傾倒が、物質主義に洗脳された豊かな生活を実感させ、家族の変化に拍車をかけてきました。女性の社会進出で女性の指導性が高まり、経済的に豊かになり、いきいきとした日常生活が営める基盤ができました。一方、男性では、長時間労働や交代勤務、家庭をもてば単身赴任など、家族から離れざるをえない状況が生まれています。このため母親も父親も、子どもを家庭で見守る時間が短くなり、子ども達は孤立することになりました。さらに、医学の進歩が、胎児や乳幼児の死亡率を低下させ、女性は「少なく産んで元気に育てる」ことが可能になりました。少子化が進むにつれ、母親と子どもの密着度が高まり、過保護・過干渉が目立つようになりました。あるいは、子どもがしつこくまとわりつくため、親は放任やネグレクト、さらに身体的虐待に至ることもあります。過保護や過干渉のもとで、子ども達は自分で決断し行動することをあきらめ、親に依存するか、反発するかという両極の反応を示すようになります。子ども達は、問題解決に挑戦するよりは、問題を回避し、問題解決を人任せにするようになり、学校や社会で遭遇する困難に立ち向かうことなく、不登校やひきこもりの子ども達が増えています。

子ども達の孤立や依存欲求を慰めてくれる「仲間」が、ゲーム、テレビ、携帯やスマホになり、子ども達はバーチャルな世界に取り込まれ、依存症に陥ることも少なくありません。子ども達が、バーチャルな世界から現実の世界に戻るとき、孤独を癒す相手は、SNSを介して出会う、「よく知らない頼れる大人」や「よく知らない気の合う仲間」になり、時に反社会的な事態に、子ども達が引き込まれる危険性も高まっています。孤独で無力な子ども達は、自分の存在を無意味・無用・無価値なものと考え、虚無感や希死念慮を強めています。そしてリストカットなどの自傷行為や自殺企図、薬物乱用などが広がっています。こうして自己評価を下げる悪循環装置ができあがってきました。

2の要素は教育にかかわります。戦後、経済活動が活発になり、商品の量産や高品質化が求められるにつれ、子ども達が就労するときには、専門知識や高度の技術が要求さるようになりました。これに合わせて、高等教育への志向が高まり、学力が重視され、成績至上主義が幅を利かせる時代になりました。大学入試が人生の登竜門という幻想から、受験勉強に明け暮れする日々が、子ども達の野心を、向上心とは別の方向に向けてしまったかもしれません。子ども達の「小さな引き出し」に、大量の知識を詰め込む教育が、引き出しの奥にしまわれている、子ども達の潜在的な力を引き出す、本来の教育を置き去りにしました。成績がすべてと考える偏った考えから、期待する成績に達しない子ども達は「落ちこぼれ」となり、子ども自身も自らの価値を見出せなくなります。そして子ども達の自己評価をますます低下させてきました。

この度のCOVID-19は、家族や教育に影響を与える可能性があります。社会進出をしている母親、そして家庭から離れがちの父親が、テレワークや勤務自粛で家庭にいることが多くなりました。また、子ども達も休校や分散登校で家にいる時間が長くなりました。ソーシャル・ディスタンシング、すなわち社会で人との距離を保つことが、家庭における家族同士の距離、すなわちファミリー・ディスタンスを縮める、という効果をもたらしています。しかしファミリー・ディスタンスの短縮は、思わぬ緊張を生んでいます。それまで適度な距離を保って、安定していた家族の距離が一挙に縮み、過剰な緊張を生み出し、遂には、ドメスティック・バイオレンスや児童虐待という悲惨な事態をもたらしています。さらに、外出を自粛することで、子ども達はゲームやSNSにのめりこみ、親はアルコール飲料やネット通販を不適切に使用し、ゲーム依存、アルコール・物質依存、買物依存などの問題がおこっています。ソーシャル・ディスタンシングが、種々の依存症を、一時的に増加させる危険性のあることに、注意を怠ってはいけません。

また、子ども達は、自宅でオンライン授業を受けることで、集団で過ごすときに体験する緊張感から開放され、勉学の面白さに気付くこともあります。仲間たちと、成績の勝ち負けを意識した「競争」ではなく、自らの知的興味で新しい知識に触れ、仲間と共に成長を目指す「競合」を、体験する機会になるかもしれません。オンライン授業が、成績至上主義の「勝つか負けるか」の競争面ではなく、他者と共存して切磋琢磨する競合面に、目を向ける機会になれば幸いです。この体験が、新しい時代の勉学意識を子ども達に残してくれるかもしれません。
最後に、ポスト=パンデミック時代では、「家を守る人」「お金を稼ぐ人」「学ぶ人」という家族成員の役割区分ではなく、ファミリー・ディスタンスが適切に保たれる中で、「家を守ること」「お金を稼ぐこと」「学ぶこと」という役割分担を考える家族が生まれることを願っています。ポスト=パンデミックにおける、家族の新しいスタイルの誕生や、それに伴う新しい子ども達の成長に期待しながら、感染防止のため日々の努力を重ね、希望をもって精一杯、生き抜きましょう。ご清聴、ありがとうございました。


			
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